信愛塾文庫 第2集「国際社会における人権」
信愛塾文庫第2集として神奈川大学の阿部浩己先生の講演記録「国際社会における人権」をようやく1冊の読み物として出版することが出来ました。これは2009年4月に開催された信愛塾スタッフ育成研修の場で阿部先生が話された講演を記録したものです。
日本に暮らす外国人が221万人を超す現在、日本は文字通り地域に暮らす外国人との「共生」の時代に突入したといっても過言ではないでしょう。国際都市ヨコハマの中心である中区は9人に1人が外国人で、隣接する南区は26人に1人が外国人です。ちょうどその真ん中に相談センター・信愛塾があります。学校が終わると(10カ国の)国籍の異なる子どもたちがどっと押し寄せ、内にたまった全てのものを爆破させるように一騒ぎしたあと、勉強したり語り合ったりして引き上げていきます。これが信愛塾の日常的な風景です。(中略)
成す術もなく翻弄され、食べるものも得られず、格差社会の最底辺で暮らす人々。こうした現実を前に信愛塾では常に実践的で、生きた、具体的な対応が求められてきました。理想論を語っているのではなく、現実を目の前にして何をしなければならないのかを導き出すこと。手を差し伸べたときに、それだけで終わらせることなく、具体的な制度や政策としてまとめられていかなければならないのです。
このような課題の解決のための一つの方策として、今、大学のロースクールと実務をになう弁護士と在日外国人の「現場」である信愛塾との新たな相談体制づくりが始まりだしました。このような試みにも国際人権法の理念は大きな力を発揮していくことでしょう。在日外国人221万人時代の日本社会を変えていく具体的手立てとして、また信愛塾活動を支えていく理論として、国際人権法をさらに生かしていけることを願ってやみません。
2010年1月
NPO法人 在日外国人教育相談センター・信愛塾
センター長 竹川真理子