25.10.31 No.85
- 「共生」ってなんだっけ?
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本題に入っていく前に、先に上の写真の撮影者について説明したいと思います。上記の写真は信愛塾に来ている中央アジアにルーツがある子どもが撮った写真で、明るくて、元気がある子です。来日してまだ2年と数ヶ月しか経ってませんが、日本語もとっても上手になっています。部活にも一生懸命で、友達もたくさんいます。信愛塾でも彼はムードメーカーとして周りの人を笑顔にします。私も彼を見ていると元気を貰います。前置きが長くなってしまいましたが、本題に入りたいと思います。
今回のタイトルをぱっと見たときに、きっと多くの方は疑問に思うのではないでしょうか?「信愛塾で実践活動をしているのに・・・どうして知らないの?」と言いたくなるのではないでしょうか。まずはその気持ちをぐっと抑えて、これから私が書く内容を読んで欲しいです。
「共生」とは何か?GoogleやYhaoo!などの検索エンジンで検索するとその意味が直ぐにヒットするでしょう。コトバンクというたくさんの辞書から、横断的に検索出来るウェブサイトがあります。その中のある一つの辞書のデジタル大辞泉では「共生」について二つの意味を示しています。一つ目は共に同じ所で生活すること。二つ目は異種の生物が、相互に作用し合う状態で生活すること。後者はどちらかというと人間と動物のような関係の意味だと思いますので、注目して欲しいのは一つ目の意味です。共に同じ所で生活すること、辞書では短い一言ですが、現実はとても厳しいです。多くの学者、専門家、政治家などは「共生」社会の実現に頭を悩ませていると思います。私はそういった学者や専門家ではないので、私の身近にある「共生」を考えていきたいと思います。
皆さんはご存知の通り、信愛塾には様々な国籍を持つ人たちが来ています。ゆえに、信愛塾にいると様々な文化や言葉、宗教そして食べ物に出逢うことがあります。私自身も中国出身であり、日常的に中国の家庭料理を食べます。父は元中華料理の料理人で、基本的には中華料理を作るので、あまり他の国の料理を食べる機会がないです。外食もここは日本なので、自然に日本の料理を食べることが多いです。しかし、最近は他の国の料理を食べる機会が増えて来たのです。信愛塾に通う子どもたちの中に料理上手のお母さんたちがいます。「ビコ」というのはご存知でしょうか?これはもち米とココナッツミルクとブラウンシュガーを使ったフィリピンのデザートです。もちもちの食感にココナッツミルクの良い香り、人によっては少し甘く感じるのかもしれませんが、私にはちょうどいい甘さです。「トゥロン」というのもとても美味しいです。これはバナナの春巻きです。カリッとした衣の中にはホクホクのバナナ、火を通すことでより一層甘味が出てきて、そして極めつけは春巻きにかかっているカラメルソース、甘さは更なる高みまで達していきます。デザート好きにおすすめです。もちろん甘いものだけではないです。「アドボン・マニ」というおつまみがあります。これはガーリックピーナッツです。殻なしの生ピーナッツを油でカリッと揚げて、油で炒めたスライスニンニクと塩で混ぜ、味付けをします。ニンニクの香ばしい匂いで鼻が刺激され、食欲を掻き立てられ、一口を食べるともう止まらなくなるのです。場所が変わって中央アジア、「クルト」という食べ物があります。これはヨーグルトに塩を加えて、水分を飛ばして乾燥させた保存食です。これを食べた時は硬い山羊のチーズだと思いました。塩味が強く、ぱさぱさとしていて、今まで食べたことのない食感です。最初は食べ方が分からず、丸ごと口の中に入れてしまったのですが、あとからこれは少しずつかじって食べる物だと教わりました。水でヨーグルトに戻して、またはそのままスープなどに入れてもいいみたいです。「ドゥディ」という主食も食べました。材料は全粒粉、水、塩だけ、薄く丸くのばして鉄板で焼いて作ります。食べた時の食感はクレープのような感じです。私はそのままで美味しく食べたのですが、何かを挟んで食べても美味しいみたいです。
途中は食レポみたいになってしまいましたが、信愛塾は本当に多種多様な人たちがいます。私自身も色んな人や考え方の人が居て当たり前、それが私の日常です。どうしたら共生社会を実現できるのでしょうか。難しいことは分かりませんが、まずは知っていくことから始めてもいいかもしれません。どんな人がいるのか、どんな考え方を持っているのか、それを知らなければ何も始まらないです。知ってようやく次のステップに繋がります。私自身もこれから色んなことを知っていき、そして身近にある小さな「共生」を大切にしていきたいと思います。皆さんもどうか身近にある「共生」を探してみませんか?
- ~ある日の相談室から~
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保護者からの相談が相次いでいる。イジメ、不登校、暴力、DV、ネグレクト…小学生から高校生の保護者の尽きない心配事の話をただ聞くことに集中する日々が続いている。たとえ子どもが30代の青年になっても、在日歴30年の母の心配はやまない。「脳梗塞になった息子が初めて私のことを母と認めてくれました」と激しく涙を流しながら語った。中卒で働き始めた息子は非正規の仕事や夜勤を繰り返しゲーム依存やアルコール依存に陥り身体を徐々に壊していった。友人もいなく孤独の中で寂しい中学生時代を過ごしたと言う。反抗期の頃は日本語の上手くない母に対して「そばにくるな」と言ったと…。今は少しずつ回復しているが母の長年の思いが届いた時でもあった。
信愛塾には小学生から高校生、20代、30代の仲間達がたくさんいる。彼らがどんな気持ちで日々を生きているのか想像して欲しい。大人は自身の子ども時代を思い出して欲しい。そんな現場の実践や伴走型支援の中で右往左往している日々が続いている。
- 編集後記
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いきなり涼しくなったかと思えば今日は厚手の上着が欲しい、そんな季節になってきました。アップダウンの激しさはそのまま今の信愛塾にも似たところがあり、昨日は大泣きした子どもが今日は嬉しそうに宿題を済ませ、スタッフに、遊んで、ゲームして、公園でボール遊びしようと矢継ぎ早のリクエスト。高校生は「お腹すいた!!」と大声で叫び、冷蔵庫の中を開けたり閉めたり。
しかしそれが子ども達やスタッフの日々の生活であり、日常の営みでもあります。私の仕事のひとつに冷蔵庫を満タンにすることも含まれています。この物価高の中でスーパーに行くのも気が重い時もありますが、たくさんの皆様のご支援の中で成り立っています。感謝する毎日です。

