会報誌「ともに」横浜だより

22.11.16 No.68

言語と優しさ 信愛塾ボランティアスタッフ 山岸笑璃

 Selamat pagi. 私は、University Malaysia Sabahに通う、山岸笑璃です。今回は、私がマレーシアの大学に進学した理由とノンネイティブとしての生活の中での発見について話そうと思います。

 私がマレーシア大学へ進学を選んだ理由には、高校時代の経験が大きく影響しています。当時、私はなかなか高校という社会に馴染めずにいました。そんな私の居場所の一つが、海外に繋がりのある同級生たちでした。共に生活をしていく中で、彼らが日々困っていることがあることに気が付きました。例えば、提出物をこなすことができなかったり、授業に必要なものが用意できなかったりというようなことです。私は彼らの様々な問題を目の当たりにし、改善していきたいと思うようになりました。大学でこのテーマについて研究をしたいと考えましたが、日本の大学は費用が高いうえに、自分が納得できる場所を見つけられませんでした。それならば、自分が「ノンネイティブ」という立場になろうと思い、海外進学を決意しました。

 マレーシアを選んだ最大の理由は、費用でしたが、その他にも非常に優れている点がありました。それは、「言語」です。マレーシアは多民族国家です。マレー系、中華系、インド系など様々な人種の方が暮らしており、言語も、マレー語、中国語、タミル語、英語、その他原住民の言葉など多くの言葉が話されています。英語を話すことができれば、日常生活で食事をしたり、買い物したりすることは困りません。しかし、学校生活をおくる、ローカルの人と一緒に住むとなると、マレー語が話せないと困ることがたくさんあります。例えば、大学からのメッセージやミーティングで使用される言語がマレー語のため、うまく情報が受け取れないことが多々あります。

 マレー語を喋りたいけれども、喋れないというジレンマがあり、マレー語への拒絶反応が初めはありました。マレー語が話せないため、留学生としか話さなかったり、ローカルの友達といるときは様子を見て過ごしたりと、マレー語を避けて暮らしていました。そんな生活の中で、会議に欠席してしまったり、提出しないといけない作業ができなかったりすることも増え、自分を責めることも多く精神的に辛かったです。ときには、「留学生」なんだから仕方がないと自分で言い聞かせてる時もありました。

 しかし、様々な困難があるからこそ、人のやさしさにより多く触れる機会がありました。クラスに参加したときは、クラスメイトが「留学生がいるので英語でお願いします」と言ってくれたり、会議で決まったことや、やらなければならないことを個人的に連絡してくれたりと助けてもらいました。また、休暇中にルームメイトの実家に寄らせてもらった際には、英語が苦手な家族も英語を使って話してくれました。

 そんな多くの素敵な出逢いに支えられ、半年間、何とか生き抜くことができました。そんな人たちと、よりたくさん会話をしたいので、残り2年、マレー語を習得できるように精進していきます。

外国人の意見にも一票を!! 信愛塾ボランティアスタッフ 林健懿

 你好!私は、日本の大学に通う、中国人の林健懿です。小学二年生の時に来日し、10年以上過ごしてきた私が感じる、日本に残る外国人差別、特に選挙権ついて話したいと思います。私が選挙権という言葉を初めて理解し、学んだのは中学校の社会の授業でした。しかし、当時は教科書をいくら読み込んでも外国人に選挙権が適応されるという文言は一つも見つけられませんでした。授業の終わりに、この事を先生に尋ね、私たち外国人には選挙権がないという事実を再確認させられました。そして、両親になぜ私たちにはないのか聞いてみたのですが、「外国人だからしょうがない」という言葉が返ってきました。当時の私は、「そういう物だからしょうがないのかもしれない」と思っていました。

 しかし、高校や大学で様々なことを学び、経験していくに従い、少しずつ疑問は増えていきました。まず何よりも疑問に感じたことは、私の両親はかれこれ20年以上日本に住み、税金を払い続けてきたのに、自分たちの意見が一切国や地方自治体に反映されないという事実です。たとえ訴えたいことがあっても投票権がないために、外国人の意見や不満は二の次、三の次とたらいまわしにされてきたのです。いま日本に外国人が約289万人住んでいます。これは、日本の人口の約2.3パーセントに当たります。街中を歩いていると100人に2人が外国人という状態です。私が住んでいる横浜だとさらに多くの外国人に出会うことができます。彼らには、私の両親のように日本に移住してきた方や植民地支配の結果として日本で暮らすようになった在日朝鮮人の方もいます。そして、一人ひとりに生活や政治に対する意見や要望があります。

 私にも意見があります。私は現在、信愛塾で、外国人の子どもたちの学習支援をしていますが、海外から来たばかりの子どもは本当に右も左もわかりません。そんな子どもたちをサポートするために、中国語や英語やフィリピン語ができるカウンセラーや先生を学校に配置してほしいと思います。嬉しいことに信愛塾にいる中国の子は私の前だと母国語を使って、何でも話してくれます。しかし学校ではそうではない子もいると聞いています。だからこそ彼らが母国語を使って何でも相談し話せる存在はとても大切で、必要不可欠だと思っています。私が小学生の時、両親が共働きだったため、何でも言える存在は弟しかおらず、私は常に孤独でした。もし母国語を話してくれる大人の人がいたらどんなに助けになったでしょう。私がかつて住んでいた地域は外国人が少なかったので、実際に導入することは難しいかもしれません。しかし、横浜の中華街や関内といった地域では毎年海外から多くの子どもが入ってきており、このような地域に導入してくれたらきっと子どもたちの助けになってくれると思います。

 そんな私たちの願いを叶えるために、ヨーロッパの多くの国が認めている外国人地方参政権を日本でも認めてほしいです。一部の方は外国人が国防や原発、領土問題などに介入して悪影響を及ぼすかもしれないと懸念するかもしれません。実際、私だってその可能性がゼロだとは断言できません。でも、一方的に外国人が悪影響を及ぼすと考えるのは極めて偏った見方だと思います。だからこそ、在留年数による制限を設けるなどして、地域社会のメンバーである定住外国人に参政権を与えるべきだと思います。私は、日本全国で地方参政権を認めていくことは、日本に住む誰もが自分のルーツを肯定し、真の意味で生きやすい社会の実現につながると考えています。もしそんな世の中になったら、私は胸を張って未来の子どもたちに誇ることができるでしょう。