会報誌「ともに」横浜だより

23.7.26 No.72

データで見る在日外国人と信愛塾の課題 信愛塾編集部

 出入国管理庁によると、2022年末時点で日本に在留する外国人は307万5213人で、前年に比べ11%増え、過去最多を更新したと発表している(2023年3月24日日本経済新聞)。在留外国人300万人時代への突入である。出入国管理庁発表資料によると在留外国人の国籍別では①中国(761563人)②ベトナム(489312人)③韓国(411312人)④フィリピン(298740人)⑤ブラジル(209430人)⑥ネパール(139393人)⑦インドネシア(98865人)の順となるが、特にベトナム、中国、ネパール、インドネシアからやってきた人が急増していることが分かる。在留資格で見ると①永住者(86万)②技能実習(32万)③技術・人文知識・国際業務(31万)④留学(30万)⑤特別永住(28万)の順となるが、中でも留学(+92808)や技能実習(+48817)が急増していることがわかる。
 日本社会は、少子高齢化が急速に進行しており、それを補うような形で外国人人口が増大している。企業は不足する労働力を、アジア各地からやってくる労働者に依存せざるを得ず、留学生や技能実習生としてやってきた人々を労働力の供給源としているのである。単純労働は受け入れないというのが政府の建前ではあるが、やがて結婚したり子どもができたりして、生活基盤を持った住民としての定住化が進んでいく。

 現在、横浜市の外国人住民は約10万6千人で、およそ市民の35人に1人が外国人となる。横浜市が公開する市内在住外国人の統計を確認すると、2020-21年にかけて新型コロナウィルスの影響などを受け減少していた外国人の人口が、 2021年以降、再度上昇傾向にあり、 2 021 23年6月にかけて約 12.7パーセント増加している 。(図1を参照)こうした市内在住の外国人の 7 割以上は、中国、韓国、ベトナム、フィリピン、ネパールといったアジアの国々の出身者である。

 2023年6月末現在、横浜市の人口全体に占める外国人の割合は約3. 0パーセントで、国の人口全体に占める外国人の割合が約2 .5パーセントであることを考えると、横浜市に暮らす外国人の割合は国全体の割合よりも若干高いことがわかる。また、外国人住民の半数以上が 1 8 区ある行政 区の中でも、中区、鶴見区、南区、神奈川区、港北区の5区に暮らしており、横浜市内でも一部の地域に外国人住民が集中して暮らしている(図2を参照)ことがわかる 。

 こうした人口統計からも分かるように、外国人住民が集中している地域(中区と南区の接点)に信愛塾があり、外国につながる子どもが6割にもなる近隣校などと同様、外国人との共生の真っただ中にあることがわかる。この地域で抱える課題は近未来の日本社会が抱える課題のさきがけともいえる。今、信愛塾では年間1100件を超す外国人からの相談が寄せられ、相談スタッフのスマホにかかってくる相談はひっきりなしの状態である。課題の深刻さなどは本誌コラム『ある日の相談室から』などでもお伝えするようにしているが、現実は極めて厳しいと言わざるを得ない。
 例えば在留資格や言語、家族関係、貧困などの様々な要因が複合的に絡み合って、DV、ネグレクト、セクハラ、医療、貧困、自死願望など様々な問題が起こっている。日本社会からの視線や、外国人に対する理解不足や偏見もある。このような背景を抱えた子どもたちは多くの困難を背負わされて暮らしている。子ども達が安心して安全に過ごせるスペースは子どもたちの「居場所」であり、そこは学びや遊びや仲間がいる場だけでなく、時には食事の提供を受けるなど家庭でも学校でもない第三のスペースとしての役割を果たしている。また「居場所」を利用しての外国人相談は子どもたちの背景にある困難さを解消するための実践的な活動そのものである。困難な課題は関係機関と連携をとるなどして解決まで結びつける、そんなセーフティネットの役割まで果たしている。このような活動は外国人が増えてきている地域には極めて需要が高い。行政はこうした地域活動を支えるためにNGO・NPOへのスペースの提供や財政的支援などをもっと真剣に考えていかなければならないだろう。将来を見据えた外国人市民との共生のための施策はもはや「待ったなし」である。